時の螺旋。
異星人の
その時、ひとりの青年が過去へと跳んだ。
それだけなら、ありがちなジャンプ事故だった。実際、戦争中にも短い者で数週間、最悪な者になると地質学レベルの超古代へのジャンプすら起こっているという。ジャンプを制御する遺跡にとってもそれは、ごくごくありがちな『事故』だったにすぎない。
だが、彼はあまりにも遺跡に愛されすぎていた。
時間も空間も越える影響力を誇る遺跡は、無限とも言える無数の並行世界で彼を飛ばし続けていた。ある時は彼のために少しだけ条件のよい場所に誘い、またある時は彼の想い人のために彼を彼女の元に運んだ。またある時は『やりなおし』に都合のよい世界に誘導した。遺跡に正邪などの概念はないが、あまりにも自分と相性のよすぎるこの『青年たち』を、遺跡はまるで意志があるかのように時の狭間で翻弄し続けた。
これは、そんな悲劇の青年テンカワアキトのひとりが経験した、とある並行世界での異端の逆行物語である。