いつもと違うボソンの光は、ちょっと眩しかった。俺はいつものようにボソンアウトを待ったが、やけに長い。まるであの頃、あの懐かしいナデシコで火星から地球へ飛んだ、あの時を思わせた。それはそこはかとなく懐かしさと、寂しさを伴っていた。「…俺もまだ、そういう干害を持てるもんなのか。そんな事を考えて苦笑したりもした。
…ってあれ?「かんがい」って「干害」で正しかったか?いや「潅漑」?「館外」…は違うよな。
どうでもいい事だけど俺はあまり頭がよくない。火星じゃバイトバイトだったし、ナデシコじゃ戦ってばかり。アパート暮らしの時に至っては、頭脳労働関連はルリちゃんが「これくらいさせてください」と言って全部引き受けてくれてたんだ。年下にそんな事任すか普通って?そう?ルリちゃん頭いいし、しっかりしてるから問題ないと思うんだけど?え?そうじゃない?男のきょうじ?…きょうじって何?いやごめん、だから頭良くないんだよ俺。
まぁいい。別に漢字がわからなくても戦いには、あいつらを消してしまうには関係ないだろ。
話をもどそう。
いつもと違うボソンの光は、ずいぶんと長く続いていた。あきらかに異常だった。俺は立ち上がろうとしたがリンクがうまく働いてないのか周囲がよく見えない。いつのまにか光、光、光の洪水。いったい何がどうなってるんだ。
「アキトっ!!」
ラピスが叫ぶ。応えるかわりに、俺は抱きしめてやる。
「ジャンプが、ジャンプが制御…」
制御できない、と泣きそうなラピスを抱きしめてやる。離れないように。
「…心配するな、ラピス」
「…アキト?」
「どこに行くかわからないが…俺がついてる」
まぁ、ふたりして死ぬかもしれないが…できる事ならこの子だけは、なんとか助けたい。俺の何を犠牲にしてでも。
「…うん、アキト」
ラピスが抱き付いてきたのがわかる。
五感のほとんど萎えてしまったこの身体だけど、ラピスのぬくもりだけは感じることができる。感覚を共有しているせいなのか…そのぬくもりが今、無性に悲しい。
どうしてなんだろう。どうして俺は、関わるひとを次々と不幸にしてしまうんだろう?
やりなおしたい。
どのような形でもいい。やりなおしたい。そうしたら、少しでもマシな未来にしてみせるのに。できなくても努力するのに。
ひてりでも、死なないように。ひとりでも、悲しい目を見ないように。
…そう、ひとり、でも…。