その目覚めは、いつもと違っていた。
目覚めたのは和室だった。壁に掛軸がかかっていた。カレンダーの日付が過去に戻った事を示していた。俺は質素な布団に寝ていたようだ。よくわからないが、結構高い階級の人間の部屋のようだった。
悪くない趣味だ。純和風というのがちょっと気になるが。
「…ていうか…木連かここ?」
言うまでもないだろう。日付からすると間違いなく会戦も近い木連のどこかだ。壁に軍服がかかっている。どうやら優人部隊のそれのようだ。
「…俺が優人部隊?…どういうことだ?」
まぁ過去に戻ったくらいだ。いくつかのシチュが違うくらいは当然ありうるだろう。しかし…軍人?木連の?
「…なんだこれは…」
じっと手を見る。骨ばった男の手。いかにも木連の軍人らしい。よく鍛えられた精悍な手だ。
どう間違っても、当時の俺じゃない。こりゃまるっきりの別人だ。鏡…どっかにないかな?
キョロキョロと周囲を見る。床の間に手鏡があるのを見付けた。男の部屋だ。単なるお部屋のインテリアなのだが鏡は鏡。俺は立ち上がると鏡の方に歩いた。
「……」
ふと、和風の寝巻をまとった自分の身体を見る。
年配とは言わないが、中年にかかりそうな歳ではありそうだ。よく鍛えられているからあまり老けてはいないが、ちょっと理不尽なものを感じたりする。まぁいいけどな。
「さて、と…鏡鏡、と………なにぃっ!?」
鏡に写った顔を見た俺は、あまりの事に目が点になった。
「く、草壁!!草壁春樹だとぉ!?」
そこには、俺が知るより数年は若い、草壁春樹の顔があった。