その時、俺は不様に血反吐を吐いていた。
腹の中がごっそりなくなっていた。
「……」
セイバーが固まっていた。自分の満身創痍すら棚にあげ、俺の方を呆然と見ていた。
「……」
遠坂も固まっていた。魔術による攻撃もバーサーカーの前には意味をなさず、もはや死は目前だというのに。
「……」
そして、その背後にバーサーカーはいた。動きこそ止まっていたが動き出したら最後、ふたりはぐちゃぐちゃのミンチになり肉片をそこら中に散らかすのは火を見るより明らかだった。
──やめろ!
──やめてくれ!
くそ、なんて不様だ。俺はふたりを守るどころか足手まといにしかなってないじゃないか。
うごけ!
うごけ衛宮士郎!おまえは正義の味方になるのだろう?こんなことで、こんなところで何もできず死ぬのか?
あぁ、意識が遠のく。
くそ……だめだ。ここで失神したら死ぬ。いやどのみち助かるまいが、俺はともかくふたりが……。
くそぉ……。
『仕方ないじゃない』
頭のどこかで声が響いた。
『未曽有の大英雄相手に食い下がろうなんて元々不可能よ。衛宮士郎にはそんな能力も強さも才覚もない。あたりまえのことじゃない』
やかましい、誰だ黙れ。それどころじゃないんだ。
『──力が欲しくない?』
──なに?
『力があればふたりを助けられるよ。わたしはそれをあげられる。わたしも大したことないけど、きみの力とあわせれば少しはマシになる。「正義の味方になりたい者」から「正義の味方」にしてしまう事もできるかもしれない。
でもね、それは決定的にきみの人生を変えてしまう。だって』
そこで声は一瞬、躊躇するように止まった。
『だってわたしは■■の■■だから。
わたしを受け入れたら最後、人間「衛宮士郎」としてのきみの生涯は終わる』
……よくわからないが、それで勝てるのか?
『勝てる。少なくとも今ここで切りぬけることはできる。ふたりを助けられるわ』
──わかった。
『え?』
俺に力をくれ。早く!