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暗闇の相談事

『ねえアーチャー、どうして貴方は衛宮くんが気に入らないの?』
『?なぜそんなことを聞くんだ?凛』
『衛宮くんを見たでしょう?あれはもうある意味「衛宮士郎」じゃないわ。セイバーが言うにはそうなんだって。突然女の子に変身しちゃったのはセイバー由来の宝具の影響もあるらしいけど、何より彼自身の変容が最大の原因らしいわ』
『そんな事は関係ない。信ずるに足りないマスターを警戒するのは当然のことだろう』
『貴方は違うじゃない。わたしを誤魔化せるとでも思ってるの?』
『……』
『ねえアーチャー聞いてちょうだい。
 わたしはこの聖杯戦争に勝ちたい。でもそれは「勝つ」という事自体が目的であって聖杯が欲しいわけじゃない。
 だから味方も信頼できる事が第一なの。どうしてもあのふたりと組みたいのよ』
『……あれが信頼できると?』
『できるわ。昨夜のふたりを見て確信した』
『……』
『貴方はわかるはずよアーチャー。
 聖杯なんておいしいブツを目の前に信用できる魔術師なんてそう多くはないわ。基本的に外来の魔術師はパス。マキリは動く気配が今のところないし、アインツベルンに至ってはもうどうしようもない。
 とどめにあのふたり、根本的なところは笑っちゃうくらいよく似てるし』
『……ふん、確かにそれはわかる』
『ええそう。あのふたりは「他者のために無償で命をかけられる」者。最初の衛宮くんのままなら正直問題ありまくりだったけど、女の子にかわった事でいくつかの問題が解決すると思う。少なくともセイバーの意見は無にできなくなるし、セイバーにしてもあの衛宮くんをほったらかして先走る事ができない。お互いがうまくブレーキ役になると思うの。
 あとはこちらの操縦次第だけど、いつ背中から刺されるかわからない者よりはずっと安心よ』
『しかし、衛宮士郎はあの通りだ。
 サーヴァントの影響で不死身に近くなったというのならわかるが、女性化したあげく正体不明の魔術まで操りあまつさえAクラスであるバーサーカーの防御まで破って見せたのだろう?あの半人前の坊やがだ。
 これはただごとじゃないぞ。それでも信用できるというのか君は?』
『ええ。貴方が手伝ってくれるならね、アーチャー』
『……』
『わたし最初は貴方がセイバーゆかりの者だと思ってた。でも違う、そうじゃない。貴方は、衛宮くんゆかりの者なのね』
『なぜそう思う?』
『さあ?でも証拠はいろいろあるのよ。ほら、これとか』
『……それは』
『他にもいろいろあるわ。さあどうする?』
『……』
『わたしは貴方を詰問したいんじゃないのアーチャー。言いたくないなら言わなくてもいい。きっとそれなりの事情があるんだと思うから。
 でも、貴方と既に道を分かたれた「彼女」にまでそれを向ける必要はないんじゃない?』
『……』
『どう?』
『……わかった。だが条件がある』
『なに?』
『奴は正義の味方なんてものを目指している。
 信条としてそれが理解できんとは言わん。いやむしろ理解できる。私もかつてはそうだったからな。
 だがそれは危険だ。君の行動がもし奴の行動原理と一致しなくなったら』
『たちまち敵にまわる。そう言いたいのね』
『そうだ凛。
 磐石で揺るがない価値観というのは確かに信頼性がある。だがな、その柔軟性のなさこそもっとも危険なのだ。狂信者と組むのと同じことだからな』
『……それについては問題ないと思うわ、アーチャー』
『なぜだ?』
『……見ればわかる、とでも言うべきかしらね』
『なぜそこで赤面する?凛』
『あ、あはははは。う〜ん……ま、見ればわかるわよ』
『???』



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